第九

師走。年末になるとテレビや街のいろんなところから「第九」のメロディーが聞こえてきます。

日本で年末に第九が演奏されるようになったのは、戦後間もない頃。オーケストラ団員の収入が少なく、年末年始の生活に困る状況を改善するためだったといわれています。第4楽章には合唱も入るため、合唱団員の家族もチケットを買ってくれて集客しやすい、というメリットもありました。

我が国では「年末の餅代稼ぎ」などと揶揄されることもある第九…しかし私は「苦悩から歓喜へ」というベートーヴェン的スローガンが、「今年もいろいろあったけど、来年もひとつ頑張りましょう!」という日本人の考えにマッチしていい習慣だと思います。


1989年12月25日。東西ドイツ分断の象徴でもあったベルリンの壁が崩壊し、それを記念したイベントがレナード・バーンスタインの指揮で行われました。

選ばれた曲はもちろんLudwig van Beethovenの

“Sinfonie Nr. 9 d-moll op. 125”。交響曲第9番 ニ短調 作品125、通称「第九」。

西ドイツ・東ドイツに、分断のきっかけとなったアメリカとソ連、それに第二次大戦時のドイツの敵国イギリスとフランス、東西6つの楽団のメンバーによって特別に編成されたオーケストラ。これに東西ドイツの合唱団、ソリストが加わった豪華な布陣。第4楽章のバリトンと合唱で、歌詞の“Freude(歓喜)”が“Freiheit(自由)”に変更されています。

この演奏会の翌年にはこの世を去るバーンスタイン渾身の指揮。

この年の夏、ヘルベルト・フォン・カラヤンはベルリンの壁崩壊の直前に鬼籍に入り、そして翌年にはバーンスタインも…二人の巨匠の死によって、まさに「一つの時代が終わった」ようにも感じました。

私が所有するこの時の演奏会のCDは、おまけでベルリンの壁の石片が付いています。

DSCF2170

DSCF2173

2022年12月20日